ANSWER|エアロの本当の話|風洞実験でわかったこと|BIORACER
エアロの本当の話風洞実験でわかったこと
BIORACER のエアロ開発は、感覚や勘ではなく 計測データ に基づいています。プロダクト部門責任者 エンリコ・アッコルシ と空力開発担当 エラ・レイズ への本社インタビュー、そして自社で行う 風洞実験のデータ から、エアロウエアの「本当の話」を整理しました。
一言で言うと。
風洞実験では、空力的に最適化されたウエアは通常のウエアより 5〜15ワット の差を生む。プロにとっては勝敗を分け、アマチュアにとってはより少ない力で長く走れる差。ただし、「ウエアがライダーの体にフィットしていなければ、空力的なメリットのほとんどが失われてしまう」。これが開発陣の結論です。
本社から車で10分。
BIORACER専用の風洞がある。
BIORACER のエアロ開発は、風洞実験施設でのテストから始まります。感覚や勘ではなく計測データに基づいて、ウエアの空気抵抗を一つひとつ検証する。それを、ベルギーで毎年行っています。
F1級の風洞で、
毎年テストを重ねる。
ベルギー本社から車で10分のところに、「バイクバレー」風洞実験施設があります。現在はリドレーグループが所有している施設ですが、BIORACER は契約を交わしており、毎年かなりの時間をバイクバレーでの実験に割くことができます。
この風洞は最近、大幅な改修を受けて精度と信頼性が高められました。ベルギー連盟による評価では、F1や航空関連でも使われるシルバーストーンの風洞と性能が比較され、その低速風洞と肩を並べるレベルにあることが証明されています。シルバーストーンはヨーロッパ地域のゴールドスタンダードとされる施設。世界トップクラスの風洞を、自転車競技の開発のために使えるブランドは多くありません。
- 本社から車で10分のテスト環境
- F1・航空分野と同等水準の風洞
- 毎年かなりの時間をテストに投入
テストは段階的に進みます。最初は生地単体でのテスト。腕の形状に合わせた円筒形のツールを使って、生地そのものがどんな空力特性を持っているかを調べます。各生地を個別にテストし、その後、生地の組み合わせパターンを検証して、異なる生地をどのように配置すれば最適かを見極める。
そこからプロトタイプを製作し、まずダミー人形を使ってのテスト。最終段階では、人間が実際に風洞内に入ってテストをします。脚の動きも測定するためです。ダミー人形では動きが制限されますからね。バイクやポジションはもちろん、ヘルメット、ソックス、グローブまで考慮します。「The Most Tested(最も徹底的にテストされた)」──それが BIORACER の哲学です。
「ベルギーにとって自転車競技は信念であり、宗教のようなものです。」
— Enrico Accorsi|BIORACER Product Directorどこに、どの生地を使うか。
CFD解析で決める。
風洞実験と並行して、BIORACER は CFD(流体解析)ソフト も活用しています。体のどこにどのように空気が当たるのか、空気が体に沿って流れるのはどこか、乱流が生まれるのはどの部分なのか。それを解析することで、どの場所にどんな生地を使えば空気抵抗を減らせるかをシミュレートします。
空気が体に沿って流れる場所
滑らかな生地を使う。空気抵抗を最小化し、流れを乱さないことが目的。
乱流が生まれる場所
テクスチャーのある生地を使う。エアロストライプのような凹凸が、空気抵抗を低減することが風洞実験で証明されています。
CFDの解析結果をもとに、生地の最適な組み合わせを推定し、プロトタイプを作成し、それを着せたダミー人形での風洞実験を行う。生地の配置は、理論的に決まるのです。この解析なしに生地を配置しても、空力的な意味はありません。
「見栄えのためだけにストライプ生地を配置しているウェアも見かけますが、空力性能を高めるには、生地を適切な場所に正しく使う必要があります。」
— Enrico Accorsi|BIORACER Product Directorデザインに見せかけた空力パターンと、本当に機能する空力パターンは、見た目だけでは区別できません。だからこそ、開発の裏側が問われるのです。
なぜ、数字で
アピールしないのか。
バイクメーカーやホイールメーカーは、空気抵抗の削減値や秒数・ワット数といった具体的な数字でマーケティングを行います。しかし、ウエアではどのメーカーもそれをやりません。理由はシンプルです。ウエアの数字は、誰が着るかで変わるからです。
ウエア全体の潜在的な節約効果
ドイツ連盟との共同テスト:空気抵抗を減らす要素を100%とした場合、ソックスを含むウエア全体で約8%の節約効果が推定されました。決して小さくはない数字。
体型・ポジションで大きく変動
ウエアはフィット感や体型によって数字が大幅に増減します。フレーム・ホイール・ヘルメットのように形状が固定されず、数字が安定しないのです。
例えば レムコ・エヴェネプールの場合、ウエアが何であっても空気抵抗にほとんど差がない。彼のポジションが非常に空力的に優れているため、ウエアの影響は小さいのです。同じウエアでも、誰がどう着るかで性能は変わります。
「売り上げだけを考えれば、分かりやすい数字でアピールしたほうがいいのかもしれません。でも私たちは、ユーザーをだますようなことはしたくないのです。」
— Enrico Accorsi|BIORACER Product Directorジャージか、エアロスーツか。
走り方で決まります。
開発陣は「プロが重視する要素」として空力性能・フィット感・重量・体温調節を挙げています。レースに出る方なら空力が最優先。ロングライドが中心なら通気性・快適性。「不快感を覚えるとエネルギーが失われる」──ウエア選びは、ライドのスタイルから逆算するのが正解です。
ジャージ + ビブショーツ
Versatileロングライドや日常走行で、汎用性が最大の強み。
上下別のウエア。長時間のロードでは通気性と快適性が重要になるため、ジャージ+ビブの組み合わせが理にかなっています。気温や用途に合わせて上下を組み合わせられる柔軟性も魅力。アマチュア向けに最適化された 35〜45km/h の速度域でしっかり効果が出るエアロ素材を使っています。
エアロスーツ(ワンピース)
For Raceレースで勝ちにいく1着。迷っているならこちら。
上下一体構造。体に密着し空気を逃がさない設計で、レーススピードでは通常ウエアと比べて 5〜15W の差を生む。プロが重視する4要素のうち、空力性能を最大化する設計です。「迷ったらこちら」──1着でレース対応できるコスパは見逃せません。
「エアロスーツは高い」と言われることがありますが、ジャージとビブショーツを合わせるとエアロスーツと同じくらいか、それ以上の合計価格になることが多いです。ジャージ+ビブは上下を別シリーズで使い回せる利点があり、エアロスーツは1着で完結する潔さがあります。どちらが「得」かは、用途で変わります。
結局、いちばん大事なこと。
生地・パターン・縫い目・構造、すべての要素を考え抜いた上で、
開発陣が最後にたどり着いた結論はシンプルでした ──
「おそらく最も重要な要素は、フィット感です」。
どれだけ高性能な生地を使っても、ウエアがライダーの体にフィットしていなければ、空力的なメリットのほとんどが失われてしまう。風洞実験もCFD解析も、その前提があって初めて意味を持ちます。エアロウエアを選ぶなら、スペックの前に、まずサイズ選びにこだわってください。
サイズ相談も、モデル選びも、無料で。
エアロウエアの選び方、サイズ感の確認、EPIC エアロスーツのご相談まで、専任スタッフが個別にお答えします。お気軽にご相談ください。
※ 本ページの内容は、BIORACER メディア掲載のインタビュー記事 ビオレーサー本社インタビュー(前編)/開発者の頭の中・(後編)/開発者の本音 をもとに再構成したものです。